単眼鏡が広げる美術鑑賞の世界

単眼鏡が広げる美術鑑賞の世界

美術鑑賞をより楽しむために欠かせないアイテム。それが単眼鏡です。
単眼鏡で美術作品を鑑賞する最大のメリットは、絵画や工芸の細部に宿る美しさを拡大して堪能できること。 それらの美は、肉眼では決して味わうことが出来ません。今回アートテラー・とに~さんが単眼鏡が広げる美術鑑賞の世界をご案内します。

アートテラー・とに~

解説者プロフィール
アートテラー・とに~

1983年生まれ。千葉大学法経学部法学科卒。元吉本興業のお笑い芸人。
芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、 現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営など幅広く活躍中。
アートブログ https://ameblo.jp/artony/

用途で選ぶ4倍と6倍

美術鑑賞に適している単眼鏡は、4倍か6倍です。
僕が愛用しているのは、6倍。美術館でじっくり美術品を鑑賞する時にも、 旅行先で少し離れた位置に安置された仏像を拝観する時にも、頼りになるのが6倍です。 距離が近い場合も、遠い場合も、この1台が2WAYで活躍してくれます。
ただし、操作のしやすさに関しては、4倍のほうに軍配。 手ブレが少ない分、初めての方にも使いやすいのと、6倍よりも視界が明るく見えるので、 美術館での鑑賞に限って言えば、4倍でも充分に細部に宿る美の世界を堪能することができます。

単眼鏡でもっと広がる
美術鑑賞の世界

  • 単眼鏡で美術鑑賞をより楽しむコツ。それは、絵に隠された秘密を探すことです。 なんだか難しいことのように思えますが、単眼鏡があると、意外と簡単。「あれっ、あんなところに人が描かれている!実はキーパーソンなのではないか?」とか、「おっ、あんなところに鳥が描かれている!もしかしたら、何か重大な意味があるのでは?」とか。気分はすっかり名探偵です(あくまで、気分だけ(笑))。
    例えば、歌川広重の代表的なシリーズ《東海道五十三次》。
    誰もが一度は目にしたことがあろう浮世絵です。その中でも特に有名な日本橋の図。こちらの絵の中を単眼鏡を使って、隅々まで探索してみてください。すると、不思議なことに気が付くはずです。

  • わからないという人には、ここでヒント。手前に描かれている人物の足元にご注目ください。
    そう、よく見ると足の指が6本あるのです。後ろの橋を渡っている人の中にも、6本指の人がいます。実は、他の《東海道五十三次》の絵の中にも、6本指の人はたびたび登場しています。
    これは研究者や浮世絵ファンには有名な話で、道教の神仙思想に基づくものであるという説や、海賊版を出版されないためのコピーガード説、はたまたうっかり描いちゃっただけ説など、さまざまな説があるようですが、その真偽は現在も不明。ともあれ、単眼鏡を使うと、こんなディープな美術の秘密の世界を垣間見ることが出来るのです。

  • 続いては単眼鏡を片手に絵の中の世界を探検してみましょう。
    今回探検するのは、《洛中洛外図》。
    京都の洛中(市街)と洛外(郊外)の街並みや風俗を描いた屏風絵です。戦国時代から江戸時代に制作され、現存する良品は30~40点ほど。その中でも特に有名なのは、狩野永徳が描いたとされる国宝《上杉本洛中洛外図屏風》です。織田信長から上杉謙信へ贈られたと伝えられる逸品で、左隻と右隻を合わせて、実に約2,500人ほどの人物が描かれています。ただし、ごく小さい姿で描かれているので、肉眼では判別不能。まるで、 人がゴミのようです(←?)。
    単眼鏡を使えば、立ち話をする人、犬に追いかけられる人、女性に背中を流してもらって鼻の下を伸ばす男性などなど、人々の生き生きとした姿に出会うことが出来ます。
    他に洛中洛外には、どんな人が描かれているのでしょうか。是非、自分もその中の一人になった気分で旅してみてください。

  • 日本美術の数ある絵画の形式の中で、特に絵柄が細かいであろうものが曼荼羅(まんだら)。
    それも、大日如来の説く真理や悟りの境地をビジュアル化した両界曼荼羅です。
    “両界”、つまり、2つの世界。胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅の2種類があります。どちらの曼荼羅も細かすぎて伝わらないほど、びっしりみっしり仏さまが描かれています。肉眼ですべてを見えるようになるには、確実に修行が必要です。
    単眼鏡を持っていれば、修行の必要は一切なし。画面にびっしりみっしり描かれた膨大な数の仏様と出会うことが出来るのです。

ビクセンの単眼鏡

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